「研修、ちゃんと受けてくれるかな…」
そんな不安を持つ人事担当者は少なくありません。でも、受講姿勢が圧倒的に違う企業があるとしたら——。
今回は、研修の「受け方」で、講師である私たちが衝撃を受けたU社様の事例をご紹介します。
「こんな会社があるんだ…!」講師が驚いた、その理由
U社様からご依頼いただいたのは、管理職研修。テーマは「部下との接し方」や「1on1の基本的な進め方」といった、いわゆる管理職としての”当たり前”を見直す内容でした。
📋 研修の基本情報
- 対象:全国各支店の管理職
- テーマ:部下との接し方、1on1の進め方
- 規模:10名以下の支店も含め、全拠点で実施
一見すると、よくあるベーシックな研修です。
しかし、この企業の取り組み方が、群を抜いてスゴイのです。
研修前から始まっている「学びの仕組み」
U社様の取り組みで、まず驚いたのは研修前の準備でした。
🔄 U社の研修準備プロセス
ステップ①:部長以上が先行受講
まず部長クラスが研修を受講し、内容を深く理解する
ステップ②:課長層へレクチャー
学んだ内容を課長等にレクチャーし、組織内で共有
ステップ③:管理職間で練習
実際の場面を想定し、管理職同士でロールプレイング
ステップ④:質問リストの作成
実践を通じて生まれた疑問や課題を整理し、講師に事前共有
講師の本音:
「正直、ここまで準備してくる企業は初めてでした。届いた質問リストを見た瞬間、『この研修、気を抜けない』と身が引き締まりました」
この質問が、また本質的で鋭いのです。
📝 実際に届いた質問例
- 「部下のモチベーションが見えにくいときの1on1のゴール設定は?」
- 「指導と叱ることの境界線をどう引くべきか?」
- 「心理的安全性を保ちながら、甘えを生まない関係をどう作るか?」
- 「世代の違う部下への接し方で気をつけるべきポイントは?」
どれも現場で悩み抜いた末に出てきたような、実践的で深い問いばかり。
研修当日の「空気」が、まるで違う
そして迎えた研修当日。U社様の受講姿勢は、やはり圧倒的でした。
💡 研修中の様子
- 全員が真剣にメモを取る ── 誰一人として眠気を感じさせない
- 質問の手が次々と挙がる ── おさらい後も議論が深まり続ける
- 講師の知見を引き出そうとする ── 「どう実務に活かすか」を常に考えている
- 知っていることも再確認する ── 「それ、知ってる」という態度が一切ない
研修は、簡単なおさらいから始まります。しかし事前質問に答えていくと、そこからさらに議論が深まっていくのです。
「講師の知見をいかに引き出すか」「どう実務に落とし込むか」――
組織全体で学びを最大化しようとする姿勢が、会場の空気から伝わってきました。
「学びへの意欲」が、役職で失われない理由
さらに印象的だったのは、管理職層の学びへの姿勢でした。
⚠️ 多くの企業で見られる現象
昇進するほど、「それ、知ってる」「もう聞いたことがある」という態度で研修に臨む方が増えがちです。学びへの意欲は、役職が上がるほど失われやすいのが現実です。
ですがU社様の管理職層には、それが全くありません。
✅ 知らないことは貪欲に学ぶ
新しい知見や手法に対して、素直に吸収しようとする姿勢
✅ 知っていることも再確認する
「聞いたことがある」で終わらせず、自分の理解を深める機会として活用
✅ 自分がどう見られているか意識する
「どう振る舞えば、チーム全体の学びが促進されるか」まで考えている
この姿勢が、組織全体の学習文化を作り上げているのだと実感しました。
講師も”見られている”という緊張感
U社様の研修で特筆すべきは、双方向の成長が生まれることです。
🔄 生まれる好循環
受講者が本気で学ぼうとする
↓
講師も”見られている”ことを意識する
↓
フィードバックの質が自然と高まる
↓
受講者の学びがさらに深まる
↓
その経験が他社の研修にも還元される
正直に言って、U社様のような企業との研修は、我々講師にとっても刺激的です。
「もっと良い研修を届けたい」と背筋が伸びます。そして何より、この経験は今後の他社様向けの研修にも確実に活かされていきます。
なぜ、U社様はここまでできるのか?
U社様の取り組みは、決して「特別な企業だからできること」ではありません。
組織として、学びを仕組み化しているからこそ実現しているのです。
🎯 U社が実践している「学びの仕組み」
- トップダウンで学びの重要性を伝える ── 部長層が率先して学ぶ姿を見せる
- 研修を「受けるだけ」で終わらせない ── 事前準備と実践練習を組み合わせる
- 組織全体で知識を共有する ── 学んだことを横展開する文化がある
- 学びを実務に落とし込む意識 ── 「どう活かすか」を常に考える
- 小規模拠点も見捨てない ── 10名以下の支店でも研修を実施する
この「仕組み」があるからこそ、管理職が貪欲に学び、組織全体が成長し続けるのです。
多くの企業が陥る「研修の罠」
一方で、多くの企業では研修が形骸化しているのも事実です。
❌ よくある失敗パターン①
「とりあえず受けさせる」研修
事前準備なし、事後フォローなし。ただ「受講した」という実績だけが残る。
❌ よくある失敗パターン②
「聞いたことある」で終わる研修
管理職が「それ、知ってる」という態度で臨み、新たな気づきが生まれない。
❌ よくある失敗パターン③
「大規模拠点だけ」の研修
小規模拠点は後回しにされ、組織全体に学びが浸透しない。
U社様の取り組みは、こうした「形だけの研修」とは対極にあります。
学びを組織に定着させる仕組みがあるからこそ、研修が本当の意味で機能しているのです。
あなたの会社の研修、機能していますか?
✓ チェックリスト
- 研修を「受けるだけ」で終わっていませんか?
- 管理職が「それ、知ってる」という態度で臨んでいませんか?
- 小規模拠点の社員は研修を受ける機会がありますか?
- 研修の内容が現場で活かされていますか?
- 上層部が率先して学ぶ姿を見せていますか?
- 組織全体で学びを共有する文化がありますか?
- 研修後のフォローアップはできていますか?
一つでも「No」があるなら、研修の仕組みを見直すタイミングかもしれません。
「学びを仕組み化」すると、何が変わるのか
📊 組織に生まれる変化
🎯 短期的な効果(1〜3ヶ月)
- 管理職の意識が変わる
- 部下とのコミュニケーションが改善する
- 研修内容が現場で実践される
- 組織全体に学びが共有される
🚀 中期的な効果(6ヶ月〜1年)
- チームの生産性が向上する
- 離職率が低下する
- 次世代リーダーが育つ
- 組織全体の成長スピードが加速する
💎 長期的な効果(1年以上)
- 「学び続ける文化」が組織に根づく
- 競争優位性が高まる
- 人材が育つ組織として評価される
- 持続的な成長が可能になる
「研修をもっと意味のあるものにしたい」
そう感じている人事ご担当者の方へ。
U社様のような「学びを仕組みにする改革」は、決して特別な企業だけができることではありません。
適切な設計と、組織としての本気度があれば、どの企業でも実現可能です。
研修を「受けるだけ」で終わらせない。
管理職が率先して学び、実践し、組織に広げていく。
学びが文化として根づき、現場に確実に活き


